2015年8月18日 (火)

携帯電話で話すには

誰でも携帯電話を持つのが当たり前の時代、それだけに近頃では困ったことも起こります。我々落語家にとって一番困るのが、落語会の真っ最中に携帯が鳴ること。落語に入る前のトーク「枕」を喋っている間に鳴るのであれば、まだなんとかネタにしようもあるんです。でも落語本題に入ってから携帯が鳴り出したりすると、これはもうどうしようもない。携帯が鳴ったとたんに観客はみんな一斉にそっちを向いちゃう。
以前、終盤の一番いいところで客席の携帯の着メロが鳴り出した。その鳴り出したメロディーがなんと、「蛍の光」。観客はそろって帰り支度を始める始末、酷い目にあいました。
かつて立川談志が独演会の高座で、座布団の上に座ってぼやいたことがあります。「客席でね、電話が鳴るんですよ。こんど一度ね、ここで鳴らしてやろうかと思ってんだけどね」。大受けでした。
 
これほど身近な携帯電話、それだけに健康に悪いという話もチラホラ聞かれます。これからお話するのは、携帯を利用しているあなた自身の、ぞっとするようなお話です。携帯電話を使っていると、脳腫瘍のリスクが増大するという、とても恐ろしいデータが発表されたんですね。
スウェーデンのオレブロ大学病院の研究チームが16件の様々な研究を集めて比較分析したところ、10年以上携帯電話を使っている人は、携帯電話を使用していない人に比べると、聴神経腫瘍のリスクが2.4倍になるという結果を報告したのです。
聴神経腫瘍というのは良性の腫瘍ではありますが、聴力低下やめまいを起こして来る腫瘍で、治療法はほとんどが手術です。つまり頭蓋骨を割って中にある脳にメスを入れなくてはならないのですから、良性だからといって安心はできませんよね。
さらに、悪性の脳腫瘍である神経膠腫も、リスクが2倍になることが分かりました。しかも不気味なことに、いつも当てている側の方が、脳腫瘍が発生しやすいんですって。右でも左でも、いつも同じ側で携帯電話を使っていると、それだけたくさんの電磁波にさらされることになるからなのだそうです。
 
どうしても携帯で話さなくてはならない人って多いと思います。これからは携帯で話す時はイヤホンを使う方が良いのかもしれません。電磁波の影響を受けないように、本体はできるだけ身体から離すのが肝心。携帯を長い棒の先にくっ付けて、この棒を担いで、長い長いイヤホンを耳に付けて、歩きながら話す・・・ちょっと異様な姿ですよね。道行く人がそれを見て「ナニやってんの」「うん、今、お離し中」・・・シャレにもなんないか。

2015年7月22日 (水)

大口開けてくれる商売

「医者と落語家、どっちが楽しいですか」、よく聞かれます。これほど困る質問もないんですよね。だって、どっちかがたのしい、なんて答えたら、もう片方は楽しくないということになるわけでしょ。これは困りますよ。場合によっては、どちらとも言い難い状況ってあるんですね。だから結構、質問する相手によって答えが違っちゃうわけ。
医師会主催の会(こういう質問をするのは医者が多い)で聞かれたりすると、「そりゃあ医者ですよ、決まってるじゃないですか」と答えるし、落語会の後の座談会(こんな時も必ず聞かれる)なんかでは、「やっぱり落語家ですね」ってな具合。
私って、ホント、いい加減な奴だねえ。
でも言えるのは、お客さんに大きな口を開けて笑っていただけると、すっごく嬉しいんですね。医者やってると、患者さんに笑ってもらうなんてことは、ほとんどないです。雑談している時はともかくとして、仕事で話している時なんかは、患者さんはほとんどが難しい顔。たまには怒り出す人もいるしね。もし笑顔で話せたとしても、せいぜいニコニコしてくれる程度で、大口開けて笑っていただけるなんてことまずないですよ。仕事中、患者が大口開けて商売になるのは、歯医者くらいなもんですね。
 
ところで、歯医者さんって虫歯の治療だけじゃなくて、最近では予防にも力を入れる方が増えています。虫歯を作らないための歯科医療、大いにやってもらいたいものです。これはね、「虫歯がなければ何でも噛める」なんて単純な話じゃなくて、心臓病に認知症、さらには長生きにも関わることなんです。 
歯周病ってご存知でしょ。その原因になるのが歯周病菌。ちょっと意外なようですが、この菌が血液に入って心臓の動脈(冠状動脈)に到達すると、心筋梗塞の原因になるんです。
 
それだけじゃないんですね、これは愛知県で行われた研究なのですが、65歳以上の人を3年から4年間追跡調査して、歯と認知症の関係を調べたんですね。すると残っている歯の数が多い方が、認知症のリスクも低いことが分かったのです。
調査結果によると、歯が無くなってしまったのに入れ歯を使っていない人では、歯の数が20本以上残っている人や、あるいは入れ歯をしていてかみ合わせが良好な人に比べると、認知症の発症リスクが最大1.9倍高いことが分かりました。
  
歯周病や虫歯などの歯の不具合が、心臓病や認知症にまで影響を与えるなんて、ちょっと怖い話でしょう。でもね、もっと怖いことに、じつは死亡率にまで関わってくるんです。
これも日本で行われた調査ですが、65歳以上の人2万人以上を4年間追跡調査したところ、歯が20本以上残っている人に比べると、10本から19本残っている人の死亡率は1.3倍に、0本から9本しか残ってない人では1.7倍に上昇していたんだそうです。
 
やっぱり自分の歯で噛むことは大事なんですよ。この話をある老人ホームで講演した先生がいたんですね。でも相手が高齢者だから、理解してもらうのに苦労したんですって。どうやって話したのか聞いたら、「噛んで含めるように」話したんだってさ・・・本当?

2015年4月25日 (土)

やっぱり俺はアルデンテ

数分間、って短いと思いますか、それとも長いですか。私ね、朝のトーストが焼ける間(約3分間ほどでしょうか)、これがもう長くっていつもイライラするんです。オーブントースターの中を覗き込みながら「まだかよ」、そして1分後には「早くしろ」って声をかけたりしてる。これ、朝から身体に悪いよね。
たった1分だって短いようで、レジや信号で待つときは長く感じるもの。時間の長さってじつに主観的なものだから、なかなか正確には分からなかったりします。
ある男が、「私は時計を見ないでも1分間を正確に言い当てます」と、壁の時計を背にして聴衆の前に立つ。さあ、固唾を呑む聴衆。「本当に正確に分かるんだろうか」と、誰しも彼の背後にある時計を凝視しています。そしてきっかり1分後、彼は「1分です」と合図をしました。宣言通り、1秒の狂いもありませんでした。聴衆は関心して大歓声。後で男の知人が聞いてみました。「どうしてぴったり1分が分かったんだい」、すると男は答えました。「簡単だよ、時計を見ていた聴衆の目が、一斉に俺を見たからさ」。
これはある外国の小説での1シーンですが、時間の長さって不思議なものですね。
 
時間が長いか短いかは自分次第、毎日のトレーニング時間だって、長いと思う人も短いと思う人もいるでしょう。「え、トレーニング、いや俺、何もしてないよ。関係ないなこのコラム」って、ちょっと待ってよ。話を聞くだけなら損はないから、最後まで読んでくださいよ。
じつは、これはデンマークのコペンハーゲンで行われた調査なのですが、ジョギングの習慣のある人1,098人と、ジョギングもしないで座ったまま過ごす時間が長い人(もしかして、あなたみたいな方かも)3,950人を、それぞれ12年間追跡調査したんですって。
まあ当然のように、ジョギングしてる人たちの方が健康には良い影響があったわけですが、じつはね、早く走る人たちより、遅い速度でゆっくりジョギングしている人達の死亡率が一番低かったんですって。このゆっくりジョギングの人たちは、何もしてない人たちより、死亡率がなんと70%も低かったんです。だからあ、しゃかりきにやることないんです。
しかも毎日じゃなくて、週に数回、ゆっくりジョギングするのが一番効果があったんですって。もともと、激し過ぎる運動はかえって身体に悪いということは言われていました。ま、スギタルは、ナンとかですよね。え、「杉樽より、檜だ」・・誰が清酒の話をしてんですか。
 
一方、アメリカでの調査ですが、毎日10分間、やはりゆっくりとジョギングするだけで、心臓病のリスクが下がることが分かりました。こちらは毎日という設定ではありますが、でも、10分ですよ。やれそうじゃないの。
トーストが焼ける3分が長いと思う短気な人もいますけど、10分っていうと、ちょうどパスタが茹で上る時間ですよね。どうです、パスタを茹でてる間、お腹をへらすためにジョギングするってのは。これ良いアイデア。でもなあ、うっかり茹で過ぎると事だし、え「俺なら絶対にアルデンテだ」って、たったの10分なんだから、早く切り上げるんじゃないの、まったく。

2015年2月24日 (火)

自分はまだ若いんだ

先日、運転免許証の更新に行ってきました。行くと写真を撮る部屋があって、次から次へと顔写真を撮っていきます。殺風景な椅子に座ると係員の見ているモニターに顔が映るんですね。それを見ている係員は、あれは写真屋さんなのか単なる職員なのか、髪型も表情も着衣もお構いなし、顔の角度だけを確認しながら、「ハイ次、ハイ次」。
みんな行列して順番を待つのですが、その列に並んでいるとモニターに映る顔が見えるんです。どう見てもその顔は指名手配にしか見えない。それを眺めながら、「ああ、俺の顔もここに映って、犯罪者のような写真に収まるのか」と、ぞっとしておりました。あの無理矢理感って、もしかして人権無視かも、となると、あれは憲法違反? ま、どうでもいいけどさ。
 
3年ぶりに撮った写真、古い免許証の写真と比べてみました。「おお、若くなってる」と感動。「ようし、これを家族に見せよう」と、帰ってさっそく家の者に見せると、「こっちの方が老けてるよねえ」と意見が一致。その老けている方の写真は、見事に今年の写真でした。3年前より若いというのは、私の勘違い、ひいき目、もっと言えば、妄想だったんですね。だけど、いいじゃん、いつまでも自分を若いと思って、ナニが悪いんだい!
 
でも、自分を若いと感じる事は、たとえ勘違いにせよ妄想にせよ、健康には良いことなんですよ。これは英国でのことですが、ヴァーシティ カレッジ ロンドンの研究チームが面白い調査をしました。「自分を何歳くらいに感じているか」という質問を、50歳以上の男女、6489人にしたんですね。そして8年間、様々な健康状態を追跡調査して分かったことなのですが、加齢に伴って増えて来る様々な病気や生活習慣病、心臓疾患、糖尿病、脳卒中、関節炎など(がんは除かれています)は、「自分は若い」と感じている人の方が程度は軽かったのだそうです。
さらに8年後に死亡率も調べてみました。するとどうでしょう、実際の年齢より自分は老けていると感じている人の死亡率は、24.6%だったのですが、年齢より若いと感じている人の死亡率は、なんと14.3%だったんですね。ちなみに、ほぼ実年齢と同じだと感じている人の死亡率は18.5%でした。
 
つまりですね、普段から自分は若いと思ってる人は、健康で長生きしているということなんですよ。もっともね、健康だから若い、と思っているのか、若いと思っているから健康なのか、それは分からないですが、健康の基準なんてものはないんですよね。だから「自分はまだまだ若いんだぞ」と思っていても、誰にも文句は言われないわけです。
さあ、自分は若いんだ、という妄想に大いにふけろうじゃありませんか。え、「妄想にふけってるうちに老けちゃった」・・・あちゃー、そりゃないでしょう!

2015年1月21日 (水)

テレビの前にずっといると

私には中学生の娘がいて、こいつがまた勉強をしない。以前、リビングの扉を開けたとたんテレビがパッと消えて、子供が何食わぬ顔でテレビの前に座っていました。不用意なことに、リモコンが娘のそぐそばあるから笑っちゃう。「まったく、まだ宿題やってないんだろ」と小言を言いそうになると、雰囲気を察してかすぐに部屋を出て行ってしまった。一体どんな番組を見ていたのだろうとテレビをつけてみると、ジブリのアニメだった。
見せてやれば良かったかな、と思いつつも、面白いものだからそのまま見ていたら、今度は娘がガラッと入って来た。「マズい」と、べつにそんなにマズくはないんだけど、テレビの前から追い出した直後、父親が同じ番組を見てたら気まずいじゃないですか。あわててテレビを消して何食わぬ顔をしたのですが、子供よりもっと不用意なことに、私はリモコンを手に握ったままでした。当の本人、それを一瞥すると「いいよ見てても。私それ、前にも見たから」と言って、置き忘れていた携帯を持つとさっさと出て行っちゃった。どっちが子供か分かんないよね、これ。
 
NHK放送文化研究所の視聴率調査によると、日本人は1日にテレビを平均で3時間46分見ているそうです。これは平成23年のデータですが、増加傾向にあるそうで、とくに70歳以上では4時間以上見ている人が、49%から61%に増加したんですって。高齢者ほど家でテレビの前に座っている時間が長いんですね。「おせんべいでもかじって動かないと太るぞお」って、それどころじゃないんですよ。テレビばっかり見ていて運動しないと、うつになりやすいことが最近分かったんです。
 
ハーバード公衆衛生大学院のミシェル・ルーカス博士たちは、運動量とテレビを見ている時間、それらとうつとの関係を調査しました。対象は60代なかばの女性ばかり(女性の方がうつが多いんです)5万人ほどで、10年間追跡調査したんですね。その結果どうなったかというと、運動量が最も多い(90分以上/日)女性は、最も少ない(10分未満/日)女性に比べ、うつ病の発症リスクが20%も低かったそうです。
もっともね、運動はうつの予防にも治療にもなることは以前から分かってましたが、さて、これにテレビの影響が加わると、どうなるでしょうか。運動量が最も多くテレビの視聴時間が短い(0~5時間/週)女性は、運動量が最も少なくテレビの視聴時間が最も長い(21時間以上/週)女性に比べ、うつ病の発症リスクが38%も低かったんです。
 
テレビを見て運動しないで、うつうつとしてる人いませんか。どうも最近元気が出ないなあという方、もしかしたらテレビの見過ぎかもしれませんよ。え、「テレビショッピングと韓ドラさえあれば元気でいられる」・・・失礼しました。でもたまにはらく朝の番組も見てちょうだいよ、「Dr.らく朝笑いの診察室」(毎週土曜の夜9:54から、BS日テレ)。だって、たったの6分だもん。

2014年12月 1日 (月)

有り難いのは親の小言

大学のころ、文化祭の前などはクラブ活動(落語研究会でした)で夜遅くまで残ったものです。そんな時には近くの中華そば屋から出前を取ったのですが、ある日、私が「野菜炒め定食」、後輩の一人が「肉野菜炒め定食」を頼みました。さあ出前が来ると、皆で自分の料理をそれぞれが取って食べるわけですが、私、食べながらふと思ったんですね。今日の野菜炒め定食はヤケに美味しいなって。どうしてだろうと思って気が付きました。お肉の量が多いんです。「そうか、やっぱり肉が多いと美味しいんだ。でも、どうして今日はこんなに肉が多いんだろう」と思いながら食べていたら、後輩が憎らしげに叫んだんです。「なんだよ、これでも肉野菜炒めかよ。肉なんかほとんど入ってないじゃんかよ」。
 
その時ようやく気が付きました。私は後輩の肉野菜炒め定食を食べていたんです。肉が多いわけだ。野菜炒め定食にもそこそこ肉は入ってはいるんですが、そりゃ肉野菜炒め定食よりは少ないのは当然。でもね、もうかなり食べちゃった後で、今更「あ、間違えてた、交換しよう」なんて言えない。そのままダンマリを決め込んだのですが、私って、悪い先輩でした。 
 
私なんかは野菜だけの生活なんて考えられない。でも世の中にはベジタリアンと呼ばれる人達がいるんですよね。アメリカのロマリンダ大学の調査では、ベジタリアンは死亡リスクが12%低いという結果が出ていますし、オックスフォード大学の研究では、肉や魚を食べる人に比べて、ベジタリアンでは心筋梗塞などになる(心臓血管系)リスクが32%低かったそうです。
 
だからってね、じゃあベジタリアンになりたいかっていうと、私は勘弁です。焼き肉だって寿司だって、諦められないもの。でもやっぱり野菜はおおいに食べなくてはいけないですよ。「野菜を残すな」と昔からよく親に言われたものです。「野菜を食べなさい」と親に言われ、自分が親になったら同じことを子供に言うんでしょうね。でも、そんな親の小言に科学的根拠が示されました。 
 
ロンドン大学の公衆衛生・疫学部による調査(2001~2008年)ですが、英国人6万5226人を調べたところ、野菜や果物を多く食べている人は死亡率が低いことが分かりました。野菜と果物を1皿以下しか食べていない人に比べると、1~3皿食べている人では14%、3~5皿の人では29%、5~7皿の人では42%、死亡率が低下していたんだそうです。とくに野菜は死亡率の低下に貢献するそうで、この調査では、摂取する野菜の量が一皿増えると、死亡率は16%減少することになるんですって。やっぱり親の小言というのは有り難いものなんですね。
 
こうなったら毎日野菜や果物をバリバリ食べようじゃありませんか。え、「野菜も果物も毎日たくさん食べてる」、そうですか健康的ですねえ。ええ「キャロットケーキにスイートポテト、それからアップルパイに洋梨のタルト」・・・ちょっと、そういうの、あり?

2014年9月25日 (木)

ストレスの果てに

ストレス解消に何をするか、人によって違いますよね。多いのが「とにかく飲む」というのと、「とにかく食べる」。まあこれが二大ストレス解消法ですよね。どちらも肥満のもとですが、ストレスで心がボロボロになっている時に、お腹の脂肪のことなんか気にしてらんないですよ。
え、私? 私は当然、飲む方ですね。私にだって強烈なストレスは何回も襲ってきます。ある日「もう誰とも会いたくない、喋りたくもない」、そんな気分で飲み屋でヤケ酒を飲んでいたんですね。すると、「あれ、らく朝さんじゃない」と声をかけられました。偶然にも知り合いに会ってしまったのです。僅かに残っていた気力を振り絞って、精一杯の笑顔で「あ、どうも、お久しぶり」。すると「ねえねえ、らく朝さんよ。みんなこっちに来て一緒に飲もう」と勝手に友達を誘います。ついに私は、陽気な飲み会の輪の中に無理矢理入れられて、盛り上げ役をせざるを得ない立場に立たされて(座ってたけど)、冗談を言った挙げ句に「らく朝さんってストレスなくていいわねえ」だって。
その帰り、もう一度飲み直そうかと思ったけど、もうその気力も何もなくなってました。ただただストレスにまみれながら、フラフラと帰宅して「ふて寝」したのを覚えています。
 
ストレス解消に飲み食いする人が多いとなると、ストレスは肥満の原因になる。それならば、ストレスの多い人には糖尿病だって多いはず。ものすごく短絡的な理論ですが、実際に調べてみたら、じつはこの仮説は正しいという結果が出たんですね。
 
ドイツはミュンヘン、ここのヘルムホルツセンターというところで調査をした結果なのですが、職場での仕事で強いプレッシャーを感じている人では、あまりプレッシャーを感じていない人に比べて、2型糖尿病(肥満によって発症する最も多い糖尿病)の発症リスクが45%も高かったのだそうです。これは5000人以上の労働者を13年間にわたり追跡調査した結果ですから、かなり信憑性は高いですよね。
一方これはカナダですが、今度は女性ばかりを対象に調査をしたんですね。これも7000人以上の女性を9年間追跡調査したのですが、仕事上でのストレスが多いと、そうでない場合に比べて、やはり2型糖尿病の発症リスクが2倍だったとのことでした。
 
「やっぱり飲み過ぎ食べ過ぎはいけないんだ」って、でもそんなに単純じゃないんです。ストレスによって様々なホルモンが過剰に分泌され、血糖値を上げてしまうんですね。たとえばアドレナリン。これはストレスを感じると増えるホルモンですが、血圧を上げたりすると同時に、血糖値も上昇させるんですよ。
 
こうなると、ストレスを感じたら、なるべく血糖値を上げないように工夫した方が良いということになります。そう、ストレス解消にはスポーツが理想的ということになりますね。でもさ、ものぐさ族にはちょっとねえ。そこでもう一つ、有効な方法があります。それは「ふて寝」。ものぐさには「ふて寝」が一番。だって、ふて寝だったら、どんなにやっても太らないもん。さ、今日もふて寝だ、ふて寝だ。

2014年8月18日 (月)

強烈なライバル

最近電車に乗ると、空いた座席がないかを探すようになってしまいました。「どうもいけないな」とは思っていても、電車に乗ったとたん空いてる座席に目がいって、気が付くとそこへ向かっているんですね。
時にはライバルも現れます。すっごく疲れている時に電車に乗って「ああ座りたいな」と、どこかに空いた座席はないかしらと思って見渡したら、一つだけあるじゃないですか。「やれ嬉しや」と、こちらの扉からそのたった一つの空いた座席に向かっていると、前方の扉から、やはり同じ座席を目指してオバチャンが突進して来るんですね。
「あれ、困ったな」と思いつつも座席に近づくと、オバチャンの迫力はすごい。私の存在を認識するなり、とたんにスピードを上げて、私の目の前で荷物をポーンと座席に放り投げる。これで席を確保すると、今度は荷物を回収すると同時に、大きなお尻をスッと座席に滑り込ませました。その素早いこと。こっちは疲れてるから、それを阻止するだけのエネルギーはないんですよ。その時思ったね、「そんなに元気があれば座るなよ」って。
 
まあ、オバチャンとバトルをしてまで座席を奪おうは思わないんですけど、疲れている時くらいは座って行きたいもの。でもね、せめて電車に乗っている時くらいは立っていようと思っているんです。だってせいぜい長くても数十分ですもんね。そのくらい立っていられなくてどうすんだって、自分に言い聞かせてるんです。
 
でも立ってることって、思った以上にカロリーを消費するんですよ。たとえば、1日に3時間立って、それを週5日間続け、それをまた1年間継続すると、どのくらいのカロリー消費になると思いますか。なんと、なんと、1年間を全部合わせると、フルマラソンを10回走るくらいのカロリーを消費するんだそうです。どう頑張ったって、1年間に10回もフルマラソンは走れないでしょう。私なんか1回だって、いや、走ったら多分30分で音を上げるでしょうね。
 
これはちゃんとした研究結果でして、英国のチェスター大学の運動科学の教授であるジョン・バックリー先生たちが実験を行いました。対象者はビジネスマンばかり10人と、人数は少ないのですが、1日に立ったまま3時間、1週間仕事をしてもらったんですって。そうしたら、1週間で平均750kcalを余分に消費できることが分かりました。これを1年間頑張って続けると、約3万kcal以上の消費になります。そうすると計算上ですが、体重にして3.6キロの減量ができるんだそうです。
「なんだ、たった3.6キロか」、と侮るなかれ。じつは、毎日毎日9時間座って過ごした場合に比べると、糖尿病になるリスクが12%、心臓病になるリスクにいたっては、47%も低下することが分かったんですって。
 
こうなったら、これからは1日3時間をめざして、立って仕事をしようじゃありませんか。あ、そうだ、じゃあ私、これから落語は座らないで、立ってやろう……でもなあ、1日3時間も落語やらないもんなあ。じゃあ、高座で激しく動き回りながら、え?「一人で勝手にやれ」、そんな、冷たいこと言わないで。ちょっと、付き合ってよ、ねえ、ちょっとォ~。

2014年8月 4日 (月)

存在感のない存在

まだ学生だったころ、先輩がある定食屋に連れて行ってくれました。「ここは安くて美味いんだよ」と案内しつつも、「だけどな、ここのパセリは絶対に食べたちゃダメだぞ」と言う。私たち後輩連中はそれを聞いて「どうしてですか」と尋ねると、なんでも客の食べ残したパセリを使い回しして、他の客に出しているんだそうです。「だけどな、パセリさえ食べなければ平気だから、まあ安心しろ」と、そう言いながら豪快にパクパク食べてました。
そんな先輩を見ながら私たちは、「だけどなあ、そんなことしてんじゃ、他のものだって分かんないよなあ」「そうそう、このトマトだって、誰のトマトだったか分かったもんじゃないぜ」「そう言えば、ポテトサラダだって残す人いるじゃん。あんなの混ぜちゃったら全然分かんないよな」なんてワイワイ言いながら同じテーブルで食べてたのですが、さあ帰る時にふと先輩のお皿を見たら、パセリだけじゃなくて、しっかりトマトもポテトサラダも残っていました。
後から皆で大笑い。だって、私たちはパセリから何から全て完食していていたのですから。一見豪快に見えながらも、じつは神経質なところを見せる先輩が、どこか可愛く見えたものです。
 
でもどうして、パセリって残されるんでしょう。単なる添え物、色合いのアクセントで付いているだけ、という感じがして存在感がないんでしょうね。しかしこんなパセリにも、自らの存在をアピールするチャンスが与えられました。パセリを食べると、コレステロール値が下がることが発見されたのです。
以前より野菜を食べるとコレステロール値が下がることは知られていました。コレステロールは小腸で吸収されるのですが、野菜の食物繊維がコレステロールの吸収を阻害するからなのです。しかし、それとはまた別の理由で、ある種の野菜がコレステロールの吸収を妨げることが発見されたのです。
 
コレステロールが小腸から吸収されるときには、コレステロールを運ぶための物質が必要なんですね。この物質を、「コレステロール吸収トランスポーター」というのですが、これの働きを邪魔してやれば、コレステロールが十分に吸収されない、結果として血中のコレステロール値を下げることができるというわけです。
これはすでに薬(小腸コレステロールトランスポーター阻害剤)として実用化されているのですが、ある種のポリフェノールにも、この薬と同じ作用があって、コレステロール値を下げることが分かりました。さあ、この嬉しいポリフェノールは、どんな物に含まれているかというと、それがパセリなんですね。パセリ以外にも、タマネギ、シソ、ピーマン、セロリ、ブロッコリーなんかにも含まれ、果物ではリンゴに豊富です。
 
やっぱりパセリは残さずに食べようじゃありませんか。でもパセリって、主役の脇にいるのに注目されることなく、いつも無視される、そんな存在です。それだけにちょっと、ほろ苦い味がするんでしょうかね。パセリ、頑張れ!

2014年7月 7日 (月)

切っても切れない仲

この料理には、どうしたってこれがなくちゃ収まらない、ってのありますよね。カレーには福神漬けにラッキョウ、ラーメンにはチャーシューにメンマ、トンカツには、洒落たサラダなんかよりもやっぱりキャベツの千切りですよ。
まあこれは国民的な「切っても切れない仲」なんでしょうけど、個人的な好みでの「切っても切れない仲」もあったりします。私の場合は、サバ塩と納豆なんですね。
サバの塩焼き定食、これはもう定食の定番中の定番。私もランチでよく食べます。でも、私はサバ塩には納豆が付いてないと、どうしても満足できない。この組み合わせは私にとっては必須なのです。サバ塩定食を頼む時には、あらかじめ「納豆ありますか」と聞いて、納豆があることを確認した後、安心して「では、サバ塩定食お願いします」てな具合。
 
以前、ランチに入った居酒屋さん、サバ塩定食があったもんだから、「納豆ありますか」と聞いたら、夜は出すけどランチでは出してないんだそうです。忙しいランチタイムにいちいちやってらんない、ってところでしょう。でもそこで引き下がる私じゃない。「でも、あるにはあるんでしょう」「そりゃ、夜は出しますから」「じゃあ、いいじゃない、今出してよ」「でもねえ」「お願いしますよ」「・・・仕様がないなあ」と、それでもニコニコしながら納豆を出してくれました。私はそのプレミアムな(?)納豆をかき混ぜながら思ったね、「やっぱり、粘りがなくっちゃ」。
 
ごくごく庶民的なサバ塩と納豆、これがじつは身体に良いんだということは、このコラムでも何度か書きました。サバやイワシのような青魚の脂肪は、ご存知のエイコサペンタエン酸(EPA)で、これが動脈硬化を防いだり、血液をサラサラにしてくれます。また納豆、つまり大豆ですよね。これにはイソフラボンが豊富、女性ホルモンのエストロゲンのような作用をするため、骨粗鬆症を防いだりするんですね。
 
ところが最近、サバ塩と納豆は、乳がんも防ぐことが分かってきました。これは国立がん研究センターなどが調査した結果ですが、納豆などの大豆食品を毎日食べる女性は、乳がんの発症リスクが約2割低いことが分かりました。大豆食品の代表として「みそ汁」に限って調べてみると、毎日みそ汁を3杯以上飲む人は、1杯以下しか飲まない人に比べて、乳がんの発症リスクはなんと、約4割低かったそうです。
さらにですよ、今度はEPA(これは、n-3脂肪酸の仲間ですけど)で調べてみると、魚を食べてn-3脂肪酸を多く摂る女性では、乳がんの発症率が半分に低下していたんだそうです。この研究は、日本人12万人を対象にした大規模調査の結果ですから、信憑性は十分ですよね。
 
肥満が乳がんのリスクを上げる、ということは昔から知られています。納豆付きのサバ塩定食なら、カロリーだってそこそこ。ランチのメニューはこれで決まりですよね。え、「私はパスタ派だ」・・・あらあ、パスタじゃねえ。え?「じゃあ、これからはサバと納豆のパスタにする」って、あのねえ…むむ、まてよ、それ結構イケルかもね。今度やってみよっと。

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