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2013年4月18日 (木)

太っ腹がケチに変わる時

 世の中には吝嗇(りんしょく)、つまりケチな人って沢山いますよね。ケチで名を馳せた人さえもいるくらいです。落語にもケチはよく登場しますが、これはもうほとんどが大金持ち。例外は若干あるものの、まずは大店(おおだな)の、それも多くは一代で財を成した大旦那と相場は決まっています。
 
 何も無いところから身を起こして、苦労の末に成功を収めたのですから普通なら立志伝中の人。尊敬されて然るべき立場なのですが、落語では嘲笑、あるいは侮蔑の対象となっています。
 金持ちはどうも江戸っ子とはうまが合わない。そりゃそうでしょう、江戸っ子は「宵越しの銭は持たねえ」というのが美学でしたから、財産を溜め込んでいる商人とは、真逆の価値観でした。
 
 でもね、そうは言っても、江戸っ子の職人だって、多少は蓄えが無くては困ったはず。仲間内では、「銭を溜めるなんざあ江戸っ子の恥」なんてことを言いながら、じつはこっそり貯金していたりなんかして、十分に考えられますよね。人間って、相反する気質を同時に持っているものです。
 
 こんな小噺があります。ある課長さん、部下と飲んで、「ここは俺が出すから。いいんだよ、金は天下の回りもの。俺に出させろ」ってんで太っ腹なところを見せて大盤振る舞い。みんなに奢ってタクシーでご帰還。さあタクシーが家に着くちょっと手前でタクシーを降りた。そこは長い塀の前でした。運ちゃんがいぶかって「お客さん、こんな塀の前でいいんですか」「いいんだよ、この塀の先まで行くとな、いつもメーターが上がるんだよ」と言って歩いて行ったんだそうです。そこまで節約するなら、最初から奢らなけりゃいい。だけどこんな矛盾を抱えているのが、人間ってやつですよね。
 
 じつは、我々の身体の中にも、こんな相反する気質も持つものがあるんです。それは「褐色脂肪細胞」という脂肪細胞。
 脂肪細胞には、白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞の二種類があって、それぞれ働きが異なります。白色脂肪細胞は、カロリーオーバーの時にはそれを脂肪として溜め込んで細胞が肥大する、つまり太るわけです。
 ところが褐色脂肪細胞は、カロリーが供給されるとどんどんそれを使って(燃焼させて)熱を作り出し、余分なカロリーを消費してくれるんですね。言わば褐色脂肪細胞は貯蓄が大嫌い、稼いだ銭はすぐ使っちゃう、宵越の銭は持たねえ、という江戸っ子と同じなわけですよ。
 
 ところが、この金離れの良い褐色脂肪細胞も、ちょっと矛盾した性格を持っていて、あまりに余分なカロリーが多くなると、今度はそれを消費することを控えて、貯蓄に転ずるらしいのですよ。    
 
 2012年、東北大学の研究グループは、カロリーオーバーになった肝臓で糖代謝が活発になると、肝臓から脳に刺激が行って、褐色脂肪細胞での熱産生が逆に抑制されてしまう、というメカニズムを発見したのです。つまり、収入が余分にあり過ぎると、太っ腹がケチに変わってしまうんです。人間にはありそうなこと、でもこれが脂肪細胞だと、ちょっと困りますよね。だって、肥満が進んでしまうんですから。
 
 思いっきり食べているうちに、脂肪細胞の性格が変わってしまう、怖い話ではありませんか。え、「私も、スイーツを食べているうちに性格が変わってしまうのよ、なんとかして」・・・あのねえ、私、そこまで面倒見切れません。

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